「やっと逢えたから
少しこのままでいたい…」




「……愛舞」




えっ?……今…

愛舞って呼んだ?




『あの…私の名前、知ってるんですか?』


「…知ってるよ」




…どうして?


どうしてこの人は
私のことを知ってるの?





いつもの帰り道

いつもの曲がり角

いつもと変わらない日


の、はずだった…のに…


運命の悪戯のせいで
その日は、特別な日になった。




「帰ろうか?」


彼は、そう言うと
抱きしめていた腕を緩め

スッと私の左手を握った。



そして、誘導するように
ゆっくりと歩き始めた。





繋いだ大きな手


どこの誰かも分からないのに
嫌じゃない。




不思議な夢を
見ているみたいだった。