そのまま、ぼーっと眺めていると、北校舎の１階のカーテンがひらりと揺れた。

しばらくそこを見ていると、カーテンの隙間から誰かの顔が覗いた。

綺麗な白い肌に黒い髪。

遠目からではそれくらいしか確認できなかったけど、その人物はこちらを見て笑った気がした。

｢......だ...ん。よしださん。｣

あの、場所は...どこだったっけ。

なんて考えていると、肩を叩かれる。

｢...ん？｣

振り向くと隣の席の須崎君が私を呼んでいるようだった。

｢吉田さん...教科書出しな。先生見てるよ。｣

そう言いながら、黒板の方を指差す須崎君。

その方を見ると、いつもより少し...いや、かなり険しい顔をしてこちらを見ている漢文の井上先生が見えた。

目が合ったのですぐに逸らし、教科書を机から引っ張り出した。

授業いつの間に始まった...？

なんて考えながらもう一回、あの場所を見ると、カーテンはきっちり締められ、
あの人はもう見えなくなっていた。