「私、変わったと思う?」

「うん、夏辺りから、なんか吹っ切れたみたいに」


いつもの居酒屋で向かい合って座って、ウーロンハイで乾杯。

勢いよく一口目を飲み込むと、可南子は私の顔を覗き込むようにいった。


「なんか、辛いことでもあんの?」

「特にないけど」

「無理してんじゃない?知らず知らずのうちに」

「そうかな」

「なんか、どう猛なワニだらけの沼とかに、素っ裸で今にも飛び込みそうな感じ」


例えがわかりやすい。

私はいつも感心する。

でも、私はワニがいる沼にはとびこまない。

素っ裸で外になんか出ない。


「ま、多少の無理は生きていく上で必要じゃない?」

「香乃の場合、なんかやけくそに生きてるよね」


数少ない私の友達、可南子。

茉莉はお人好しで、世話好きな性格をしてるけど、可南子は真逆。

さばさばしてて、言いたいことははっきり言う。

口数もアクションも少なかった私と、どうして合うんだろうなってたまに思う。

でも、可南子といるといろんなことを勉強できる。私にはない価値観を、たくさん提示してくれる。

だから好き。