本当にこの声の主が九十九さんなんだと思い知らされる。
男の人なのに、こんなきれいな可愛い声をしているなんて…
正直、羨ましい
「九十九予約は取れてたんだろ?なぜ先に入らないんだ?」
「社長をお待ちしていたかったんですよ」
「いつからそんなに従順になっちまったんだよ、お前は」
「そんな、最初からですよ」
店に入ると九十九さんは急に黙りだした。
奥の個室に通されて店員からの挨拶や説明を終えるまで
九十九さんは本当に一言もしゃべらなかったのだ。
どうやら九十九さんは声がコンプレックスみたい。
口を開いたのは店員さんにメニューを伝え、
食前酒を持ってきてもらった後だった。
「ほんとにお前は徹底してるよな、その上司に全部やらせるんだからな」
「申し訳ありません、社長」
「ちっともそう思ってないだろ?」
「ええ、分かりました?」
ちっとも悪びれた姿を見せない九十九さんをみて、
陸人さんにこうもずばずばと言える人がいるんだと私は初めて知った。
グラスに注がれた水を飲む。
「さて。九十九、お前のせで千草が誤解したんだぞ、責任とれ」


