それから二人にタクシーを呼んでやって金を持たせた。


いくらムカついているからといっても、夜に歩きで帰らせるわけにもいかないかな・・。



「兄さん、意外とチャラいっすね・・・」

「は?なんでだよ」



ムスッとしてる近藤。



「だって、佐伯がいるのに・・あいつらにカワイイって言ってたから・・」

「ああ、あれな。最後まで毒づいてまた紗絵に何かされたらたまったもんじゃないから言っただけだ。ぶっちゃけ、紗絵を苦しめた奴らなんか可愛くもなんともないね。ってか、俺にとっては紗絵だけが可愛いし」

「なるほど・・・。大人って感じですね。俺だったら殴ってたかもしれない・・・」



俺だって殴ってやりたい気持ちはあったよ。


本当は今だって腸が煮えくり返ってるんだ。


だけど、紗絵にとっての最良がなんなのか考えた時・・・俺はそうするべきじゃないと思ったってだけで。



「本気で守りたいモノが出来るとな、自分の気持ちよりもその子にとっての最善を考えるようになるんだよ」



紗絵の場合、紗絵を守ってやれるのは俺しかいないから。


家に帰って泣きつく両親はいない。



「俺、頑張ります!兄さんみたいな男になれるように・・・!!」

「だから兄さんじゃないって・・・」



なんだか近藤と変な友情が生まれてしまったな・・・。


でも、学校にいる間の紗絵はきっと近藤が守ってくれる。


複雑な気持ちは変わらないけど。


紗絵が安全ならそれでいいよ、俺は。