「斎藤さん、落ち着きました?」
「ええ、ごめんなさいね・・・。20歳のコウちゃんにこんな迷惑かけちゃって」
泣くだけ泣いたのか落ち着きを取りもどした斎藤さん。
ちょっとびっくりはしたけど、少し思い当たることがあった。
いつも何か辛いときは旦那さんに甘えるだけ甘えて解決するんだと前に言っていたから、もしかしたら・・旦那さんと何かあったのかもしれない。
じゃなきゃ俺のとこに来る理由が見当たらないんだ。
いつもラブラブ話を聞かされてばかりだからな。
「あの、違ってたらすいません。旦那さんと何かあったんですか?」
「旦那さんのね、幼馴染で初恋の人に会ったの。そしたら、あたしと真反対のタイプで!!・・・すっごい大切な存在だったんだなって分かっちゃって。楽しそうに話してる二人みてたらどうしてか分からないけど、なんかもうあたしダメになっちゃって・・・」
悲しいんだか怒ってるんだか分からないような表情だ。
斎藤さんって旦那さんのこと大好きなんだな。
「ははっ!焼きもちっすね?」
「あたし心狭いわよね・・。いっつも仕事ばっかりしてて、それでも旦那さんはニコニコしてくれてたから・・甘えちゃってたの。他に気になる人がいたって当然よね。あたし、最低だわ」
そんなことない。
好きな人がいれば人は誰だって焼きもちをやくはずだ。
「焼きもちやいちゃうほど好きなんですよね?旦那さんのこと」
「ええ・・」
「それを旦那さんに伝えてみてはいかがですかね。俺いっつも思うんですよ、斎藤さんの旦那さんて斎藤さんのこと大好きなんだろうなって。斎藤さんっていっつも旦那さんの話するじゃないですか。会ったこともないのに、斎藤さんから聞く話で分かっちゃうほど旦那さんも斎藤さんに負けないくらい好きって気持ちがあるんだなって」
理想の夫婦ってくらい仲良さそうな話をいつも聞いていた。
だから、分かる。旦那さんも斎藤さんが大好きだって。
「大の大人が何こんなことで悩んでるのかしらね・・。情けないわ」
「情けなくなんかないですよ。大人になっても大切な人を思うが故に悩んでしまうってのはカッコイイですよむしろ」
「コウちゃん・・。ごめんなさいね、そうよね。この気持ちはあたしが旦那さんを好きだからなのよね。一人で自己完結しちゃって、旦那さんに何も言わなかった・・。ただその場にいたくないって気持ちだけで飛び出してきちゃったの」
ん!?
てことは旦那さん探してるんじゃないのか・・・?
「旦那さんも心配してるでしょうからとにかく連絡しましょう」
「携帯おいてきちゃった・・」
「じゃあ急いで帰りましょう。俺送りますよ。泣き顔のまま外一人で歩かれるのも心配ですし」
とりあえず、状況が悪化する前に斎藤さんを旦那さんのところに送り届けないとな。
「仁さん、俺ちょっと斎藤さん送ってきます」
「ああ。悪いな頼む」
カウンターにいる仁さんにそう告げた。
カウンターの一番端っこにちょこんと座ってる紗絵。
「紗絵、なんかちょっと出てくるけどなんか欲しいもんある?」
「いらない・・」
紗絵に話しかけるとすぐさま目をそらされてしまった。
どうしたんだ?
なんか・・・機嫌悪いのか?


