ゆっくりと躊躇いがちに顔をあげた紗絵の頬を伝うキラキラと輝く雫。
暗がりなのに、紗絵の瞳がうさぎさんのように真っ赤なのが分かる。
いつも、泣けなかったんだろうな。
泣ける場所が、なかったんだろう。
「なぁ紗絵。そうやってなんでも俺に言ってよ。紗絵の気持ちを全部わかってあげることは無理なのかもしれないし、紗絵に代わってやることも出来ない。だけどさ、いつだって紗絵が呼べば駆けつけるよ。紗絵が望んでくれるなら傍にいる。てか、いさせてよ」
「コウくん・・・」
交わる視線。
紗絵の瞳が揺らいでるのが見て取れた。
「私、怖いよ・・・。コウくんがそういってくれるのは嬉しい、だけどその優しさに慣れてしまうのが怖いよ・・」
紗絵の、本音だ。
優しさに慣れてしまうのが怖いなんて、普通の中学生は思ったりしない。
今までは優しくされないことが普通だったんだな。
そう思うことでどうにか自分の心を守っていたのかもしれない。
「俺は紗絵が俺を必要としなくなるまで離れないよ」
「でも・・・」
「じゃーほら、約束!」
戸惑う紗絵の前に差し出した小指。
「え?」
「指きりげんまん!」
我ながら子供じみてるとは思う。
だけど、口で約束っていったってきっと不安になるだろうし。
「いーから、ほら」
そう言えば俺の小指にやっと紗絵の小指が絡んだ。
「よっし!じゃあ約束の証にこれ、やる」
キーケースから取り出しのは俺の家の鍵。
「いつでも来いな?」
もう紗絵は十分頑張ってきた。
だから、これからは・・俺も一緒に支えてやるからな。
紗絵の悲しみも苦しみも、一緒に背負うから。
だからいつかその悲しみや苦しみが、紗絵の幸せの糧となりますように。


