「ふぅ~」
カフェの扉の前。
気合いを入れて頬を叩く。
最初で最後の、プロポーズだからな。
ぐっと力をこめて扉を押せば、仁さんと談話してる紗絵の後ろ姿。
ゆっくりと一歩一歩、紗絵の元へと歩み寄る。
出逢った頃よりも髪も伸びて色気も増した。
日に日に紗絵への思いが強くなっていくんだ。
「コウくん、おかえり?」
振り向いた紗絵が俺を見つけて不思議そうに首をかしげる。
「紗絵」
「コウ・・・くん?」
仁さんがそっと紗絵を立ち上がらせて俺の方へと紗絵を差し出す。
周りは俺が今からすることを察知したのか、一歩さがってこっちをみつめてる。
くぅ~・・雰囲気にのまれそうだ。
「卒業、おめでとう。よく・・・頑張ったな」
紗絵に花束を差し出す。
べたべただけど、薔薇の花束。
かなりの本数だからずっしりとした重さだ。
元々学校に良い思い出のない紗絵。
高校に入学してからも色々あった。
紗絵が閉じ込められた事件・・・今思い返しても腸が煮えくり返りそうだ。
けど、紗絵は負けなかった。
体調が戻ったらしっかりと学校に通い続けたし、行きたくないと弱音を吐くこともしなかった。
紗絵がひたむきに変わろうとしていたことを、間近でみていた俺はよく知ってる。
だから本当に思うんだ。
よく頑張ったな、って。
「それはコウくんがいてくれたからだよ・・・。コウくんがいつだって、私を支えてくれてたから」
「俺も紗絵に支えられてるよ」
紗絵が抱きかかえるようにして花束を受け取ってくれた。
「キレイな薔薇だね・・・。うれしい、ありがとう」
花束と共に咲いた紗絵の笑顔の方が、キレイだ。
素直にそう思う。
「あら、コウちゃんやるわね♪紗絵ちゃん、そのお花の数をきいてみたら?」
花束の意味にいち早く気づいたのは斎藤さんみたいだな。
「たくさんあるけど・・・何本?」
「108本だよ。薔薇は数で花言葉が変わっていくんだ。1本なら、ひと目ぼれ。11本なら、最愛。99本なら、ずっと一緒にいよう。108本は・・・」
紗絵の前で片足をつき、ポケットから箱を取り出して開いて見せる。
見上げた紗絵の瞳が一瞬揺れていた。
「結婚、してください」


