「俺・・・佐伯には告白しません、一生」



チキンを頬張る近藤がそう言った。



「どうした、急に」



近藤が紗絵を好きなことを、彼氏の俺が好ましく思うわけではないけど。


近藤自体は結構好いている俺としては・・・その言葉はなんとなく引っかかる。



「俺に遠慮してんのか?告白したいなら、してもいいんだぞ。彼氏がいるからって諦めろなんて言わない」



紗絵を譲るつもりなんて全くないけど、紗絵を思う気持ちをどうにかしようとも思わない。


人の気持ちは、それぞれ違う。


好きになる人も、それぞれ違う。


他人がどうこう言って変わるようなものじゃないんだ、


誰かを好きになるってことは。


自分の気持ちに自分でケリをつけるまで、とことん向き合うしかない。


だから


告白するな。


なんて言えないよ、俺には。



「遠慮してるわけじゃないんです・・・。そうじゃなくて。俺が好きな佐伯って、兄さんのことを見つめてる佐伯なんだなって思って・・・」



食べ終わった後のゴミを右手でグシャッと握りしめた近藤。


悲しいんだか悔しいんだか分からないような、そんな表情をしている。



「さっき、兄さんを譲れないって言ってた佐伯がめちゃくちゃ可愛くてキュンとしました。マジで。・・・学校でも、兄さんのことの話するときはめちゃくちゃ可愛いんです。それを見るたびに好きだなぁとか思っちゃって。不毛っすよね、マジ。こんなこと兄さんにいうべきじゃないんだろうけど」



ハハ・・・。


って乾いた笑いを付け加えて、黙ってしまった。