「どうして・・・どうして、あたしじゃダメなの?」
縋るような目で、コウくんを見つめる恵さん。
「寄り添っていたつもりだった。出来るだけ力になっていたつもりだったわ・・・。お願い、お願いよ・・・。高木をあたしに返して。あなたはまだ若いじゃない!!これからだって色々な人に出会うはずよ!!あたしには・・・高木しかいないの。ねぇ、お願いよ・・・」
私のことを思い切り揺さぶってから玄関に力なく倒れこんだ恵さんをみて、私は胸が痛くなる。
こんなに、コウくんを好きな人をみて・・・同情してしまいそうになる・・・。
だけど、それは絶対にしちゃダメなこと。
「コウくん・・・私、恵さんと話がしたい。二人だけで」
コウくんを譲ることなんて、絶対に出来ないの。
だけど。
こんなに真剣な想いを無碍にすることも出来なくて。
私だって、闘わないといけないはずなの。
コウくんの傍にいるために、闘わないといけないはずなの。
いつまでも守られてばかりじゃダメだから。
「紗絵・・?」
「お願い・・。ダメ?」
心配そうなコウくん。
「・・・・・・分かった。紗絵の体もまだ万全じゃないから、15分だけだぞ?」
「ありがとう」
「近藤、お前も来い」
「あ、はい」
コウくんは靴を履いて、近藤くんと一緒に外へ出てくれるみたい。
「恵さん。この前言った通り、俺には紗絵しかいないんです。けど・・・純粋に嬉しかった。人に好かれるってこんなに心地よいものなんだって恵さんが教えてくれたんです。ただ、今の俺には紗絵しかみえない。紗絵が俺の唯一なんです。だから、気持ちに応えることは出来ません」
恵さんに頭を下げてから近藤くんと一緒に、コウくんは家を後にした。
玄関に座り込んでいる恵さんと、その前に立つ私だけの空間になる。
言わなければいけないことも、伝えたいことも、たくさんある。
だけど、無言で涙を流し続ける恵さんに私はどの言葉からぶつければいいのだろう。


