「やっぱりいた…」





「ひっ、…な、なによ」





梓ちゃん、普通にしてたら結構可愛いと思うんだけどな。






「心配になって。もうみんな帰ったよ?」





私はしゃがみ込んでる梓ちゃんに言う。





「心配しに来たの?あなたなに」






「まだ屋上にいると思ったから」





私はゆっくりと梓ちゃんに近づいては隣に腰を下ろす。






「あなたね、お人好しにも程があるわ。人の心配なんかして、あなたは私のライバルよ?」






「そうかもだけど、」






「私はあなたが気にくわない」






そう言って梓ちゃんは立ち上がる。





「でも」





梓ちゃんは続けて私に言った。





だけど今までの表情と投げ捨てたような言葉ではなかった。






「私は絶対負けないよっ」




って、笑顔で。





ああ、そっか。





この人は本当はこういう人で…





梓ちゃん…やっぱり好きなんだね、





肥山君のこと。






梓ちゃんは屋上を出て行った。






誰もいない屋上にさっきの梓ちゃんの言葉が何度も何度も繰り返される頭。






私…





私の気持ちは変わってないはずなのに…






「私なんか勝てないよ…っ」





大して可愛くもないのに。





肥山君みたいなカッコイイ人はあんな可愛い梓ちゃんが相手にいいに決まってる。





最近少しだけ自信なくなってたけど





今はほとんどない。






「はぁ…」






静かな屋上には何度も私のため息だけが響いて聞こえた。