でも今回の私はひと味違う。

なんたってプロ並みのお菓子作りの腕前の持ち主に教えてもらったんだから!!
だから、失敗なんてあり得ないよ、きっと。


…うん、きっと…ね。



わずかに目が泳ぐ私を伊織は少し呆れたように眺めてから、小さい子に言い聞かせるように覗きこんできた。



「愛美…一朝一夕に腕は上がるもんじゃないのよ?」


むずかしいことを言うのね、伊織は。
つまりは1日くらいじゃうまく作ることなんて出来ないって言いたいんでしょ?

まぁ、確かに今日のマフィンはひどかったと思うけど。

…っ、でもでもでも!!
教えてくれたのは…っ



「…仮名くんだもん」



「えっ!?」



「教えてくれたのは仮名くんだもん」



「はい?仮名が?え…なんか意外…って、そーじゃなくてっ!!何があったの?」



伊織は私の肩をつかんでさあ話せ、とばかりに瞳を輝かせている。


これは…逃げられそうにないなぁ。
でも、まあいっか。
特に隠さなきゃいけない話でもないしね。


わくわくと目を輝かせる伊織に私は昼休みにあったことを話したのだった。