「マフィン渡した?」



授業が終わり、帰り支度をしていると伊織が聞いてきた。



「ううん」



「そっか、じゃあ帰るときに渡すんだね。きっと大丈夫だよ、食べてもらえるって!!」



伊織は笑顔を浮かべながら私の背中をポンと叩く。



「…そ、だね…」



ー言えない。


実はもう食べてしまって手元にないだなんて…。


頭によぎるのは焦げたマフィン。


あのあと、仮名くんと試食をしたんだけど…。

お世辞にも、どころかお世辞も言えないくらいおいしくなかった。