次の日、昨日とは打って変わって空は晴れ渡っている。

気持ちの良い陽気。


しかし、舞い込んだ事件は天気とは裏腹だった。



「山奥で見付かった遺体に、色平さんの指紋があったって本当なの?!」


「ああ。これが資料だ。」



午戸兎から渡された資料によると…………、



発見者は、今朝早く山菜取りへ出掛けた老夫婦。


昨日の雨で崩れたのだろう。

山は酷く荒れ、斜面には、流れたり落ちてきたりした枝が突き刺さっていた。


その中に、見えたのだ。

決してそこに存在してはいけない、人間の手が。



老夫婦はすぐに警察に通報し、捜査が開始された。


身元を証明するものを何一つ所持していない、20代~30代女性と思われる遺体。


捜査する過程で、鑑識が発見したのだ。


遺体に付着した、消えかけた指紋とごく僅かに付着した血液を。



指紋は、遺体の手首から。

血液は、遺体の衣服から。



土の中に遺体が埋められていたとはいえ、状態は良くは無かった。


それでも、見つけ出し判別出来たのは、鑑識の執念と言えよう。