「私があの時、不審者のことを口にしなければ……。巡回を断っていれば………。色平さんは襲われずに…………」



涙を耐えているのが、亥植は俯いたままだ。



「亥植、よく話してくれたな。もう業務に戻っていいぞ。」



「午戸兎さん、それはあまりにも………」



他人行儀だと、蠍髪は思う。



「生活安全課が捜査できる事案ではないだろう。それに、亥植。お前は何一つ、間違った事はしていない。色平もそう言うぞ。それと色平は襲われる前、俺に電話しようとしていたようだ。そこで何か俺に電話しなければならない事があったんだ。それが分かっただけでも前進している。お前が話してくれたおかげで、もっと前進したぞ。これは謝ることではない。寧ろ俺達が礼を言うべきことだ。」



「午戸兎さん……」



上郡には、午戸兎の言葉に込められた意味が身に染みて分かる。


過去を振り返ることは大切だ。

だけど、未来を見据えて今を変えていくことも大切だと。



「ホシは必ず逮捕する。」


「……はい!」



午戸兎の力強い言葉に、亥植も力強く返事をしたのだった。