あふれる、想い


でも…今日の辻はいつも以上に
無理して笑ってる感じがする


さっき誘った時はそんな事なかったのにな


「なんか辛い事あった?」

「…何で?」

「ん~なんとなく辛そうだなって」


俺は気になって聞いただけなのに

辻は泣き出した


本気で抱きしめたくなった


でも、俺は理性で堪えた


辻には誰か好きな奴がいる


誰なんだ…


俺は優しい言葉をかける事しか出来なかった



少しでも元気を出して欲しい


そう思って、一緒に帰ろうって誘った


「今からゲーセン行かない?」

「ゲーセン??」

「俺かなりUFOキャッチャー上手いよ?」


本気で俺は得意


「えぇ岡野君ってそんな特技があるの?」


「おう、まじで上手いよ?」


「見てみたーい」


下駄箱に行くと上條と…
可愛いって噂の山口だ

山口って気のある振りをして
その気にさせて振るのが好きな女

俺はそういう女が1番嫌いだ


辻が悲しそうな顔をして2人を見つめてる


…辻が好きなのは上條だ

俺は確信した


「辻?」


「ん?」


何もない振りをしてるから
俺もそれ以上は聞かない



「俺、自転車だから」


そう言いながら自転車を出した

平静を装うので精一杯だ

辻と上條は同じクラス

断然、俺の方が不利だ


「乗って?」

「えぇ悪いよ」

「良いから」

「だって重いよ?」

どこをどう見ても重くないだろ

「大丈夫、辻は痩せっぽっちだから」

「どうせチビですよ~」


辻がやっと笑ってくれたから
俺も笑った後
ようやく辻は後ろに乗った