忍び寄るモノ


安田君の声とも似ていたけど、話し方の感じはカセットテープの柴田さんに近かった。

それに安田君は真面目な人だったから年上の私達に敬語をなくして話すことも多分ないはず。

そう考えるとあの声はやっぱり柴田さんだったんじゃないかなって思う。

「きっと柴田さんが助けてくれたんだよ! 鎖につけられてた鍵も普通は簡単に外れる物じゃないって頼成さんが言ってたし」

「そう思うのが一番納得いくけど、なんか本当に夢を見ていたみたいだな」

「うん。……だけどあの時間は夢じゃないんだよね」

「ああ。……そう言えば俺の八重歯について頼成さんから聞いたんだって?」

岡本君はおかしい気持ちをたえるように口元に手をあてて、見下ろされた私はハッとそのことを思い出していく。

そう言えばそうだった!

岡本君から直接聞こうと思ってたのに、頼成さんから「岡本君みたいに歯医者が嫌いで八重歯の矯正に行かない人もいるのよね」と明るい感じで知らされた。

「岡本君も松嶋さんと頼成さんに言わないでって言ってくれたらよかったのに……」

「ごめん。そんなことまで話されるとは思ってなくて」

ククッと笑いながら体を震わせる岡本君に「笑い事じゃないよ!」と言って私は岡本君が開けた窓に手をかけて閉める。