忍び寄るモノ


──ひねった足首は痛みのわりに意外と軽かったようで次の日にはけっこう痛みがなくなった。

完全に治ったわけじゃないけど明日と明後日は土日で休みだからその間に治りそう。

休み前日だからかみんな楽しそうに話しているの教室で聞きながら私は窓のほうを見た。

今日は朝から強い雨が降っていて天気予報では一日中雨の予報。

こんなに雨が降っているのは安田君が亡くなった日以来だと思う。

そう思うと見えない犯人がどこかにいるような気がして落ち着かない。

授業はいつも以上に集中できなくて先生に注意されるし、お昼にはお弁当の玉子焼きを床に落としちゃうしでついてない。

「そんな日もあるよ」って奈々ちゃんが励ましてくれてへこんだ気持ちは薄れていくけどすっきりはれることはなくて。

「お弁当箱を置いてくるね」と立ち上がった奈々ちゃんの制服の袖から糸が出ているのを見て私は奈々ちゃんを呼び止める。

「袖から糸がほつれてるよ」

「本当? わたしから見えないから切ってもらってもいい?」

「うん。ちょっと待ってね」

私は筆箱を開けて中からハサミを取り出す。

体を近づけてくれた奈々ちゃんの制服から飛び出している糸をギリギリで切りとった。