忍び寄るモノ


「ちょっと足首をひねっただけだから大丈夫だよ! 心配してくれてありがとう」

「いや、大丈夫ならいいんだ。……でも一人で歩くのはまずいんじゃないか」

「そう、だね。……ごめん、うっかりしてた」

私があははとごまかすように言うと岡本君がギュッと眉をよせて泣きそうな顔になる。

その顔は止めてほしいな。見てるこっちも悲しくなるよ……。

「犯人はまだ捕まってないんだから気をつけないと」

「……うん。ごめんね?」

「無事ならいいんだ」

「鍵を返して体育館に戻ろう」と背を向けた岡本君の顔が見えなくなる。

心配してくれるのは嬉しいけどなんでこんなに心配してくれるんだろう?

まるで家族とか親しい人を心配してくれているみたいで不思議な感じがする。

同じクラスだけど私は奈々ちゃんといることが多くて他の人はそれなりにって感じ。

仲のよさそうな男子にならまだ分かるけど、岡本君が私を心配してくれる理由がいまいち分からない。

「早く戻ろう」

「あっ、待っ……いた……っ!」

声をかけられた私は慌てて立ち上がり、足首をひねっていたことを忘れて力を入れてしまった。

足首にズキズキとした痛みが入って動きが止まってしまう。

「急かしてごめん!」と慌てたように戻ってきてくれた岡本君に私は「大丈夫だから気にしないで!」と笑って返しながら密かに痛みと戦っていたのだった。