「左胸を刺されてその日のうちに亡くなったらしいわ」
「そうなんだ……」
亡くなった詳しい理由は知らなかったからお母さんの話を聞いてなかなか言葉が出てこない。
命をかけて人を守るような人が同じ学校の生徒を恨んで襲ったりするのかな……?
「同じ学年でもクラスが違ったから詳しいことは分からないけど、名前は確か……柴田良介(しばたりょうすけ)君だったような……」
「……柴田良介さん」
「そうよ。人づてに聞いた話では面倒見のいい人だったらしいから、目の前で人が襲われるのを見て我慢できなかったのかもしれないわね」
「そうなんだ。話してくれてありがとう」
「お母さんが力になれるなら協力するから」
「え……?」
「気になっているんでしょう? 今の事件」
「お母さんには分かっちゃうわよ」と柔らかく笑うお母さんに思わず顔が引きつってしまう。
お母さんは両手で私の片手を包んでギュッと握ってきた。
「だけど無理はしないこと。明の分も長生きするのでしょう?」
「うん。気をつけるね」
「さあ晩ご飯の準備をしないとね」と私の手を離して台所に向かうお母さん。私とあまり変わらない身長なのに、なんだかずっと大きく見えた。
お母さんから話を聞けて昔の事件は大体分かった。
だけど面倒見がよくて他の人を守ってくれたほどに優しい人が今回の事件を起こすのかは考えにくいよね。
それなら男子生徒の家族とか友人が通り魔の犯人をよく思わないほうがずっと自然だと思う。
それなら生徒が襲われるのは何でだろう?
情報が少なくてその日は結局謎が解けないままだった。

