居間にある二人掛けのソファーに並んで座るとお母さんは話を続けていく。
「あれはお母さんが高校三年生の時、ちょうど今と同じ七月。雨の日の夕方だったかしら。それは偶然とも言える悲しい事件だった──」
──お母さんが話した内容は本当に偶然が生んだ悲劇と言ってもいいかもしれない。
その当時、連続通り魔事件があって警察が犯人を探していた。
何人もの人が襲われていて重傷者もいる中、警察は早く捕まえなければ被害が大きくなると足取りを追っていた。
そんな中、学校の近くでまた起きた通り魔事件。
辺りを見張っていた警察の人が見つけて犯人の男は逃走。──その逃走先は学校だった。
夕方とはいえまだ遅い時間ではなく生徒はたくさん校内に残っていて、生徒玄関から侵入した犯人が玄関近くの廊下を歩いていた一人の男子生徒と遭遇。
他にもすぐ近くには何人かの女子生徒がいたらしく、犯人は一人の女子生徒に凶器を向けようとしたらしい。
「でもね、その女子生徒は無傷だったらしいの。なぜなら最初に犯人に会った男子生徒が体をはって守ったからよ」
「それじゃあ男子生徒が亡くなったのはその女子生徒をかばったから……?」
「そうよ……」
自分以外の人を体をはって守れる人なんてきっと多くはないと思う。
凶器を持った大人を相手に立ち向かうなんて同じ大人でも怖いと思うのに。

