忍び寄るモノ


授業が終わってすぐに奈々ちゃんと家に帰った私。

晩ご飯の準備を始めようと台所にいたお母さんのところに真っ直ぐ向かって話しかけた。

「どうしたの? 帰ってくるなり聞きたいことがあるなんて珍しいわね」

手を洗い終わってタオルで手をふいたお母さんが振り返る。

私はすうっと息を吸って口を開いた。

「あのさ、二十年以上前に学校で男子生徒が襲われて亡くなったって話を聞いたんだけど、お母さん知ってる?」

私がはっきり聞くと笑っていたお母さんの顔が真剣そうな物に変わる。

それから目をふせるようにして足元に視線を向けたみたいだ。

「……知ってるわ。お母さんが在学中に起こった事件だもの」

「え……!?」

まさかお母さんがいた時にあった話だとは思っていなかったから驚いて声が出てしまう。

それからもしもお母さんが襲われていたらと想像して背中がヒヤリと冷たくなっていく。

「座って話すわね」

静かな声でそう言ったお母さんが右手で私の左手をとって歩き出す。

つられるように歩きながらお母さんも私と同じ右利きだとふと思った。