……どうしよう。これから岡本君とどう話したらいいのか分からなくなってきた。
いくら私でも気軽に「左利きなの?」なんて聞けない。
他の人も左利きが犯人らしいってことを知って、岡本君が左利きだとしたらもっと教室の雰囲気が悪くなっちゃう。
うーんうーんとトイレでうなるしかできなくなっているとまたドアが開いて私は勢いよく入り口を見た。
「……葉山先生?」
「折笠さんだったのね。トイレから教室に戻る子に会ったらトイレに一人できてる人がいるって聞いて心配したのよ」
葉山先生は肩につくくらいのゆるいウェーブの髪と垂れ目を持った優しそうなお母さんといった感じの保健の先生。
見た目だけじゃなくて生徒に優しいのは有名で、先生を嫌いな生徒はいないんじゃないかなってくらい人気の先生なんだ。
今も心配そうな顔で話しかけてくれるから謝りたい気持ちになってくる。
「ごめんなさい。大丈夫かなと思ってつい……」
「学校の中だからって生徒が一人で歩くのは危ないわ。先生が教室まで送ってあげるから行きましょう」
にこっと微笑む先生。後は教室に戻るだけだから断る理由もなくて私はすんなりと頷いた。

