「今日もできるだけ複数で帰るように──」
「高橋先生、オレは一人で帰りたいんですけど」
高橋先生の声にかぶせるように前の席の男子が手を上げる。
すると次々と何人かの手が上がっていって教室の中がざわざわする。
「私も賛成です」
「ワタシもー」
「俺もそうしたいっす」
半分近くの生徒が手を上げて同じような言葉を出す。
先生が一人は危ないと言ってもみんなの意見は変わりそうになく、先生は軽く息を吐いた。
「何か理由があるのですか?」
「そりゃあ一個しかないですよ。この中に先輩を殺した犯人がいるかもしれないんだから」
「な……っ」
顔を歪ませて言葉を詰まらせる先生に一人の男子がスラスラと自分の言葉を放っていく。
それは私達クラスメイトを信用できないから怖くて一緒に帰れないというもので、私は一瞬息が詰まったように苦しくなった。
確かに犯人の姿はまだ浮かんでないらしいから可能性はゼロじゃない。
だけど何のためらいもなく同級生を疑っていると言えることが私には怖いと感じる。
事件を知ってからそう思っていたの……?
「はぁ? あたし達疑ってるわけ?」
「それないわー」
「犯人扱いされるとかムカつくんだけど」
私が驚いている間に手を上げなかったうちの何人かがムッとしたように、またはイライラしたような声で返し始めて教室の中がピリピリと張りつめていく。

