おとのきもち。

「おーーーーい!起きろー!」
その声で目を覚ますと、
見慣れない綺麗なモノトーン調の部屋。
ふわふわのベッド。
そして…イケメン。
「すてき…。」
じゃなくて!!
「あのっ!ここはどこなんですか!?
あなたは誰ですか!?」
だめだ、頭が機能停止していて…。

「俺は、昨日君のこと助けたんだよー?
忘れちゃった?ひどいなー幸音ちゃんはー」
なんでわたしの名前…って…
「あーー!昨日のオカマ!!」
「オカマじゃないし。女装が趣味なだけだし。あ、そういえば、勝手に生徒手帳とか見たけどいいよね?それにしても驚いたなー。俺ら二人とも名前に『音』って付いてるんだよ?運命感じるよねー」

淡々と1人で呟いてる音春さんを、
わたしは点になった目で見つめていた。

そっか、あのあと音春さんの腕の中で寝ちゃったんだ。

思い出してしまった。

恥ずかしすぎて顔を合わせられない…。

「朝ごはん、何か食べる?」
「ひゃい!!…あっ」
急に話しかけられたからびっくりして
噛んでしまった…
そんなわたしを、くすくすと笑う音春さん。
笑ってる顔が可愛く見える。

「はい、どうぞ、かぼちゃのキッシュだよ。」

「キッ…シュ??」
初めて聴く名前に、頭にははてなが浮かぶ。

「まぁ、いいから。食べてみなよ。」

じゃあ一口…と、
わたしは小さくフォークで切り、
口へと運ぶ。

「んんっ!おいしい!!!これ、音春さんが作ったんですか!?」

「まぁね。料理は得意だし!」
そういって、満面の笑みを浮かべる音春さんに、胸がきゅんとなった。


「あっ!そんなことより!家には連絡…」
そうだ、朝帰りなんて、一体何されるかわからない。

「それなら大丈夫。一応連絡しておいたよ。『幸音の友達ですが、今日はわたしの家に数人で泊まることになったので、ご心配なさらないでください』って。それに、電話の相手もお父さんみたいだったし、大丈夫だよ。」

大丈夫…なのかな…。
不安だな…。
そんな曇らせた表情をしているわたしを察して

「任せて!俺がついてる!」
と、自身満々に音春さんは胸を叩く。
でもなぁ、男の家に泊まったとなると…さすがに…。
と思ったのもつかの間。

やっぱり……

女装して女友達になりすますつもりだ!!

こんな手が通用するのかな…。