『食事はとれそうですか?』


リディルはパンとスープをテーブルに並べた後、ソードウィッチへと香り高いコーヒーの注がれたカップを差し出した。


『ああ、問題ない』


子供のように毛布で体をくるんでいるソードウィッチは、コーヒーを受けとると、そっと口をつけた。
着ていた服はリディルが洗濯して干しているとのことだったので、乾くまで毛布姿でいることにした。


魔女の回復力は凄まじく、昨夜は瀕死だったソードウィッチも一晩明かすだけで、体力はほぼ全快に近い状態となり、軽度の傷も癒えてしまっていた。



『ところで、貴様は一人暮らしだと言っておったが、それにしては、この屋敷は少し広大過ぎぬか?』


ソードウィッチはテーブルのパンへと手を伸ばしながらリディルに視線をやった。


『両親が僕にプレゼントしてくれたんです』


リディルは少し戸惑うような表情でそう言った。


『プレゼント?大きな屋敷で寂しく一人で暮らすのが、貴様の望みだったのか?』


『ええ…まあ、ほら、一人が気楽でいいでしょ?はは…』


どこか切なげに微笑んだリディルに、ソードウィッチは眉をひそめる。


『それでは、僕は屋敷の掃除を始めますので、ソードさんはゆっくり休んでいてくださいね』


話の腰を折るかのように、リディルは立ち上がった。


『掃除…?一人でやるのか?』


『はい。一日がかりの掃除です』