『人間と和平を結ぶ…だと?』


玉座に座るソードウィッチは眉をひそめ、大理石の広間に集まった魔女たちに視線を流した。


『はい。これは、貴女を除く魔女全員の意見です』


ズラリと並んだ魔女たちの中心に立つ"光の魔女"レイウィッチが、ソードウィッチへと静かに告げた。


『これまでの長きに渡る戦争で魔女も人間も疲弊しています。
もはや、我々が争っていた理由すら霞んでしまい争う為の争いになり果ててしまったこの戦争…。私が人間側へ和平の打診を試みます』


レイウィッチはそこまで話すと、ソードウィッチの返事を待つかのように瞼を閉じた。



『貴様ら正気か?この平和主義者と云う名の腰抜け魔女に毒されたのか?』


ソードウィッチはゆっくりと立ち上がると、傍に立て掛けていた銀の剣を抜いた。


『もう、終わりにするのです。
争いの連鎖を…破壊の積み重ねを』


レイウィッチは淡々と言葉を発してゆく。


『黙れ!!我々、魔女の存在意義は破壊だ!!
壊して殺す!!これ以外に我々が生きる意味は無い!!』


『それは貴女が決めることではありません。
戦争をする以外にも我々の魔法を役立てる事はできるはずです』


ソードウィッチの怒号を、レイウィッチの端整な声が阻む。


『黙れ!!黙れ!!黙れぇえええ!!
レイウィッチ!!貴様はやはり殺しておくべきだった!!』


ソードウィッチは制御できない怒りの感情に任せるように剣を振りかざした。


『やはり、貴女は破滅しか生めない魔女のようですね』


瞼を開けたレイウィッチは、信念に満ちた強い眼差しでソードウィッチを見据えた。




―――ズガァアアアン!!



突然轟いた物凄い衝撃音と共に、玉座が粉々に砕け散る。


『貴様…!!』


間一髪で身をかわしていたソードウィッチが歯軋りをしながらレイウィッチを睨んだ。


『私の光魔法は、世界で最も速い破壊をもたらせます』


レイウィッチはそう言って、光を帯びた人差し指をソードウィッチの方へと向けた。


『さようなら。
災厄の魔女…ソードウィッチよ』