『フフ…間違いないわ。
あの丘辺りに魔女の気配よ』


そう言って、-火の魔女-フレアウィッチは月明かりに妖しく笑った。


『ソードか?』

その、少し後ろを歩く
-鋼鉄の魔女-アイアンウィッチは、欠伸混じりの眠たそうな声を返す。


『ええ。フフ…やっぱり生きてたのね。アイアン、どうするの?
レイ様は、見つけたら知らせろって言ってたけど』


『その必要ねーだろ。
二人でやろうぜ』


アイアンウィッチは気だるそうに答えるが、その瞳は戦闘本能にたぎっていた。


『フフ…貴女ならそう言うと思ったわ…』


フレアウィッチは嬉しそうに目を細めると、紅蓮に染まる指先を唇に軽く添えた。


『フフ…隠れんぼも今夜で終わりねソードウィッチ…』


二人が丘を登りきり、屋敷を目前にした時だった。


『来るぜ!!』


突然、アイアンウィッチが猛った声を上げた。


『言われなくても』


フレアウィッチは、既に横の茂みから飛び出してくる何者かの影を視認していた。


それは、月光を反射させる銀剣を持つソードウィッチの姿だった。


―――ギィイイイイン!!

金属同士がぶつかり合う鋭い音が月夜の静寂を切り裂く。


『ハッ!久しぶりだな!!ソード!!』


片腕で受けた銀剣越しに、アイアンウィッチがソードウィッチを睨んだ。

『む…?アイアンとフレアか…』


ソードウィッチは素早く身を退くと、アイアンウィッチから距離を取った。


『フフ…やっぱり死んでなかったのね』


フレアウィッチは右手を翳し、空中に火球を作り出す。


『他に魔女の気配は無いようだが、もしや貴様ら…たった二人で妾にかかるつもりか?』


ソードウィッチは余裕の笑みを浮かべながら、二人へと交互に視線をやった。


『自惚れんな死にぞこない。
何なら、俺一人でもいいんだぜ?』


アイアンウィッチは握りしめた拳を前に出して目を見開いた。


『フフ…待ちなさい。今、面白くするんだから』

フレアウィッチが作る火球は更に巨大さを増し、もはや、辺りを照らす太陽のようになっていた。

『さぁ…処刑の始まりよ!!』


フレアの掛け声と共に、火球はもの凄い速さで放たれた。


リディルがいる屋敷の方角へ。