愛欲のビスクドール

それから時が11年経った。

玲月は「瑠璃合玲月」となり、少女というよりも大人な女性に変わっていた。
発育のいい身体つきに白い肌。
相変わらずの銀色の髪はお尻のくぼみの下辺りにまで伸び、ストンと素直に降りている。
あれだけ馬鹿にされた灰色の瞳は伏し目がちで不思議ちゃんのような雰囲気を醸し出していた。



「おはよー、れい。」



玲月の親友、武田愛佳(たけだ あいか)は校門をくぐり抜けた玲月の肩を叩く。



「おはよう。愛佳。」


優しく微笑んだ玲月は今まで読んでいた本を閉じる。



「源氏物語…原文?!読めるの?」



「結構簡単。ほら。」


愛佳は文章をみる。
頭がこんがらがっていって日本語かどうかも分からなくなる。


「読めないよ…。」


愛佳は肩を落とす。


「そう?」


「いいよね。れいは。何せあの超有名玩具メーカーの『RURIAI』のお嬢様でしょ?」


愛佳がカバンを振り回す。
一方で玲月は上品な雰囲気を醸し出したまま軽い笑みを浮かべ、伏し目がちな目でその様子を見ていた。



「私はこの髪の毛の色嫌いなの。」


「え?どうして。」


玲月が銀色の髪を掴む。


「私ね、孤児院に居たって話、したでしょ?」


愛佳は頷く。


「その時にね、この髪のせいでいじめら」


「いじめら?」


「っ…。」


玲月が頬を赤らめ、口元に手をあてている。
玲月の視線の先にはなにがあるのだろう。
愛佳は玲月の視線を辿り、前を向く。


「英語の…松本先生?」


愛佳は玲月の顔を覗く。
赤らめたまま、潤んだ瞳で見つめている。


「ほほおー。」


愛佳はニヤーっと笑う。


「松本せんせー!!」


愛佳が先生を呼ぶ。
松本先生は振り向くと玲月が一気に赤くなる。


「おはようございますー。」


「おはよう…で、そっちの瑠璃合はどうした?」


「お、おはようございます…。」