「今日から、玲月の執事になった黒橋だよ。」


玲月は首を傾げる。
執事という単語が分からないのだ。
普段なら近くにある辞書で引いて調べるのだが、まだ、辞書を買ってもらっていないので調べられない。


「黒橋は玲月の面倒を見てくれる人だから、なにかあったらパパか黒橋に言って。」


黒橋はお辞儀をする。


「…うん。分かった。」


玲月は首を縦に振る。


「今日から玲月お嬢様にはヴァイオリンのレッスン。そして私が行わせていただきます授業がございますので、しっかりとついてくるように。」


黒橋はメガネをかけ直すと玲月と同じ目線の位置にしゃがみ込んだ。


「これからよろしくお願いします。玲月お嬢様。」


「…よろしくお願いします…。」


遙和が言った通りに玲月は返事を返す。



「では、早速、この文章を読んでくださいませ。」



[赤いチューリップがお庭に咲いていました。私は近くにいって、チューリップに話しかけました。]


少し中2病が混じった文章を玲月は息を吸い、言う準備をした。



「あかいチューリップが…お庭に…○いていました…。○は○くにいって、チューリップに○しかけました。」


玲月はその後、本を大量に読まされることになったのであった。