「文字…?」


「そう。文字。文字って言うのは…。」


玲月という名は捨てた親の母、玲月から見たら祖母だ。
月の様に清らかに輝く存在になってほしい。
という思いから付けられた。
玲は祖母の玲子という名からきている。
ずっと私を忘れないで、という意味合いだと思うが玲月は祖母を知らない。
知らないまま捨てられたのだ。


「これが『あ』。」


紙に『あ』と文字を書く。
すると玲月も『あ』と言いながら書く。


「字…書いたことあるの?」


「ちょっとだけ、書いてた。」


もの凄く綺麗な字。
大人が書くような字を5歳の少女は書けている。



ーそういえば…


遙和は隠れ院長こと、涼子の言っていたことを思い出す。

『我がアルーレ孤児院は結構、人気なのよ。みんな、美少女か美少年だし、字はかけるように徹底してあって今さら教える必要なんてないでしょ?後は返事とかを徹底すればいいだけの状態にしてるの。ならマネーもあんましかからないし。しかもさ、玲月ちゃんはヴァイオリ二ストコースを受けてたからヴァイオリン弾けるしね。そこら辺の教養もばっちりなのがアルーレ孤児院なの。』


玲月は土台がしっかり出来上がっていた。


ーならあまり心配はしなくていいか。


「黒橋。」


「はい。」


黒橋と呼ばれた眉目秀麗な執事が現れた。
黒橋は代々、瑠璃合家に仕える家柄であった。


「君を玲月の専属執事に任命する。」


「かしこまりました。しかし、そうなると遙和様の専属の者は…。」


「凛華になってもらうから安心して。」


「承知致しました。」