なぜ自分はのこのこ鬼の前に姿を現してしまったのだろうか。梅姚は唇を噛みしめ、自分が起こしてしまった行動を今さらながらに悔やんでいた。
梅姚は当初、妹を逃がすため、咄嗟に自分が鬼の的になることを選んだが、この鬼らが桜華を見つけるのは時間の問題だ。
大鬼は妹の桜華と自分の体内に封印されている。今はまだ目覚めることこそないが、二人が揃った後は違う。大鬼は必ず封印から目覚め、この世の破滅をもたらす。――ともすれば、自分もこの忌まわしき大地に身を置くのは得策ではない。
幸い、梅姚の体に戒めはなく、縄も何もかけられてはいない。果たして自分はこの凶器じみた鬼たちから逃げきることができるだろうか。
梅姚はこの地から逃げる算段をしていると、女の鬼が氷のように冷たい鋭い視線をこちらに差し向けてきた。
梅姚を睨むその目は恐ろしく、憎しみが宿っている。この女は梅姚の意図を見透かしているようだ。
「間違っても逃げようと思うんじゃないよ? この島には私達が所狭しとお前を見張っているのだからね」



