鬼伐桃史譚 英桃


 ――少女の掌。そこには、何度握ったのだろうか、傷痕となった爪痕が血の赤を滲(にじ)ませていた。それはこれほどまでに思いつめていた証だ。

 彼女の物腰からして、身分は伏せているようではあるが、話し方や仕草からして、たいそう身分あるどこぞの武家の出の娘であることが窺(うかが)える。しかしそのような生まれであるならば、彼女の容姿もまたおかしい。

 彼女の髪型は他の女子とは違っていた。この時代の女子は皆、髪を大切に伸ばしている。だが、彼女は違う。年頃なら腰まではあるだろうその髪が肩までしかない。何かを決意し、髪を切ったとしか考えようがないのだ。


 彼女はいったい何を背負っているのだろう。

 南天は少女を見つめ――そして大きなため息を漏(も)らした。


「そうだね。放っておいたらひとりでも百鬼島に行きそうだ」


「しょーがねぇなぁ」

 茜もしぶしぶ頷いた。