今までも、もしかすると自分が知らない時に涙し、ひとりで心細い思いをしていたに違いない。 菊乃の話とはいったい何だろうか。 おそらくは、昨夜の盗み聞いた一件だろう。 亡き父の真実を語られるのだ。 そして自分はこれから自分の進むべき道が示されるのだ。 英桃は手ぬぐいを桶に引っかけると、重い足取りで母屋へと向かった。