真っ白な朝焼けが目に染みる。

 夜具のまま庭に降り立てば、木々の枝枝には小鳥が数羽止まっていて、賑々(にぎにぎ)しく囀(さえず)っている。

 ふんわりと頬を撫でる風が心地好(ここちい)い。


 爽やかな日の出が、英桃(えいとう)の煮え切らない感情をほんの少し軽くしてくれた。


 英桃は早朝の新鮮な空気を胸いっぱいに取り入れた。


 しかしどんなに気分を上昇させようとしても、昨夜の出来事が――母、菊乃と話していた男との内容が頭から離れない。


「――――」


 結局あれから一睡もできなかった。


 英桃はひとつ頭を振り、桶で井戸から水を汲む。


 井戸から引き上げた朝の水は、桶の中で強張った自分の顔を写し出す。その中に手を潜らせば、ひんやり冷たい。

 
 手ぬぐいを湿らせ、顔や首の後ろなどを拭いていると、こちらへやって来る人の気配に気がついた。