「ああ、そのことか。なんでも鬼は一の姫様をさらったとか……その後、二の姫様は行方不明になったんだよな」
南天が茜に続いて話す。彼の表情もくもっていた。この話は何も英桃や茜、南天だけが知っている特別なものではない。今や城下のみならず、城下から遠く離れたこの隠れ里さえにも伝わってきたものだった。
三人の間に静寂が生まれる。頭上では太陽が光輝き、小鳥が囀(さえず)る。しかし、そんなのどかな昼下がりの光景とは打って変わって、重苦しい雰囲気が流れていた。
「……なあ、英桃」
茜がぽつりと口を開く。先ほどの憂いを持った表情とは違い、何かを決意したかのような眼差しが英桃を射貫く。
「もし……もしさ、お前がこの村を出るようなことがあったら、そん時は声をかけろよ」
「え?」
「オレも村を出て鬼退治するぜ!!」
茜は仁王立ちをして、声を高らかにそう宣言した。



