――さて、無事に屋敷を抜け出すことに成功した桜華は――というと、ひとり桜並木を歩いていた。 時折、桜の花びらが風に乗り、ひらり宙を舞う。その風が、肩までの長さになった淡褐色の髪をなでる。 姉梅姚の無事を祈って必ず助け出そうと決意して髪を切った。 しかし、どうやって鬼の手から姉姫を助け出せばよいのだろうか。 不安と恐怖を振り払うため、桜華は胸元に忍ばせている小太刀を握りしめ、ひとり進む。 その日の空は雲ひとつなく、澄み渡った青が広がっていた。 ―第一章・完―