夜具を覗けば、しかしそこには何もない。愛娘の姿が消えているではないか。
あなや。
まさか鬼の仕業であろうか。ようやく鬼の手から逃れられたと思ったのに、彼らは奇襲をかけ、桜華を攫ったのであろうか。
元近とかぐやは短い悲鳴を上げた。
しかし、二人の疑問はすぐに消え去る。
桜華が眠っていたその枕元には、薄茶色の美しい髪が真っ白な紙の上に束ねて置いてあったからである。
それは桜華の決意を示していた。
心優しき妹姫は姉姫を助けるため、この屋敷を出たのだと二人は確信したのだ。
「そんな……」
かぐやの頬を涙が伝う。
ふたりは地面に崩れ落ちた。
「自ら百鬼島へ行ったのか……。愚かなことを……」
「ああ……桜華」
二人は手元からいなくなった娘を思い、嘆(なげ)き悲しんだ。



