鬼伐桃史譚 英桃


 そのような恐ろしい状況であっても、ふたつの子らはいまだに目覚めぬままだった。――否、眠り薬を施し、眠らせたと言った方が良いだろう。

 木犀は端(はな)から大鬼に敵うとは思っていなかった。だから封印という方法ですべてを終わらせようとしたのだ。

 しかし、大鬼の力は想像以上に強く、力をふたつにそぎ落とすことでしか封印できなかった。

 だから木犀はふたつの媒体を必要とした。

 ふたつの媒体――それは生気溢れる、まだ先のある童。

 一見戦とは関係のない童たちが戦場にいるのはすべてはこのためだった。



「十六年の後、その時こそ……」


 体がふたつに分かれた今も、大鬼はなおも言い続ける。勝負は決したというのに、なんという執念だろうか。大鬼の『生』に対する凄まじい思いが伝わってくる。