「で、お前はさっきから何言ってんの?」


左隣から聞こえてきた声に嫌々ながら目を向ける。
そこにあるのは私の嫌いなアイツの顔だ。

おうおう、今日も相変わらず無駄に整った顔をしやがって。


「だからさっきから心の声が漏れてんだよ!」


皆様、ご紹介いたしましょう。

私の幼馴染み、
真柴 恵斗(ましば あやと)くんです。

自慢出来るところは…

顔!

顔のみ!!


「いい加減にしろよ、ブス!!!」


最後に放たれた暴言に、私の片眉はピクリと動く。


「はぁっ!?今なんて言った!?
もう一回言ってみなさいよ、この顔だけ男!!」

「ブスっつったんだよ!耳が悪いなら耳鼻科通ったらどうですかぁ!?
後、俺は顔だけじゃありませーん!!性格もいいから、どっかのブスと違ってモテるんですぅー!!」

「うぐぅ……!!」


言い合いの末、私は負ける。

いつものことだけれど、これがまた毎回毎回悔しい。


だってアイツがモテるのは本当のことだから。
アイツは学年一、いや、学校一と言っていいほどモテる。

みんな顔しか見てないんだと私は思う。


「性格はこんなんだって知らないんだもんなぁ」


机に伏して、アイツの顔を下から覗き込む。

まあ、顔は良しとしよう…。
顔だけは。

十数年一緒にいるけど、他の良いところは私には見つからなかった。


実はすごく紳士で優しいとか…。


私が見ていたことに気付いたアイツは、こっちを見ると、静かに口を開いた。


「…見てんじゃねえよ、ブス」


うん。ないよね。


ていうか…


「またブスって言ったぁ!!!」

「だって、本当のことだろ?」

「うっ…!!」