久しぶりに長時間運転するからしっかり睡眠をとりたかったのに、車内という空間に凜と長時間一緒にいて一体何を話せばいいのか色々考えてしまい、結局あまり眠れなかった。会話がなくても良いように、CDをしこたま積んで出かけることに。
「凜、何が聞きたい?」
「HYのNAO」
聞いたのが間違いだった。こてこての失恋ソングを提案されて思わず閉口してしまう。確かにベスト盤に入ってるけどさ、ドライブの初っ端からそのテンションはないだろ。
あれー、HYのCDどこ行ったっけなぁー、ないから違うのにするなー、なんて独り言のように言って凜の好きなオレンジレンジのCDを入れた。
出発してからも特に二人の間に会話はなく。ガンガン冷房つけているのに、俺の額には汗が滲んでいた。やっぱりドライブっていうのが間違ってたのかもしれない。あと数時間この重い空気に耐えなくちゃいけないなんて……。これなら、動物園だとか水族館だとか、遊園地とかの方が良かった。
窓の外をじっと眺めている凜に言った。
「凜、ごめんな、兄ちゃんとドライブしたって楽しくないよな?海やめて、水族館でも行ってみるか?動物園でも良いし、なんなら遊園地でも」
すると凜は窓の外から目線をずらしこっちを向いた。満面とは言わないが、無理なく笑う凜にひとまず安心する。
「そんなことない、楽しいよ?海久しぶりだから楽しみ」
「そっか、それなら良かった。小百合ちゃんは元気?あまり最近、話聞かないから」
「元気だよ。真也と付き合い始めたからあまり私と遊んでくれなくなっちゃったけど」
「そっか」
凜は別れたばっかなのに寂しいなぁ、なんて軽口言えるはずもなく短くそう言い返した。
もう終わったことにあまり立ち入らないと思っていたが、やっぱり放っておけなくて意を決して話題に出してみることに。
「……凜、別に話したくなかったら話してくれなくて良いんだけど、隆君とはなんで別れちゃったんだ?」
「あれ?お兄ちゃん反対してたくせに」
「だって、いきなりだったろ。何か原因があるのか」
「うん、私が悪かったの。隆君は何も悪くない。お兄ちゃんの言った通り中途半端な気持ちで人と付き合っちゃダメだった。隆君のこと傷つけちゃった」
「隆君だってすぐに好きな人できるよ、あの子性格は変わってるけど、顔はかっこいいし女の子にモテそうじゃないか」
「そうだね、自分でもそう言ってた。大丈夫、すぐに凜ちゃんより可愛い彼女つくるからって」
「なんか一言、余計だな」
「そうそう、いつも一言余計なの」
そう言ってやっと声を出して笑い始めた凜。


