今、ここであなたに誓わせて


「凄いな、お前」
「だから篤司君の気持ちが凄くよく分かって、自分がなんとか家族を養わなきゃいけないっていう状況がさ。本当はもっと早く会って話したかったんだけど、居場所も分からないしなかなか仕事が忙しくて。妹さんは?元気?」
「元気だよ、昨日彼氏紹介されてな。一人イライラしてた」
「へぇー、もう彼氏なんてつくる年になったんだ。いくつになるの?」
「今、高校一年生」
「会いたいなー」
「変な遊び教えないって約束するならいいよ」
「あはは、過保護だなぁー」

その日は連絡先を交換して別れた。よく夏休みになるとお互いの家へ遊びにいっていたのを思い出す。林の中へハチミツを仕込み、セミやカブトムシを取りに行ったりして遊んだ。どっちが多くトンボを捕まえられるか競争したり。オニヤンマや神様トンボを見つけて必死になって追いかけたり。

あの頃の海斗しか知らないだけに、今の海斗と凜を会わせるのはちょっと躊躇いがある。

そんな思いもよらぬ再会からしばらくして、凜から隆君と別れたという願ってもない報告を受けた。いい機会だと思って、凜にはまだ早かったんだと説こうにも、凜の表情は彼を好きじゃないと言っていた割には浮かないもので、俺からは何も言えなかった。

あいつのこと多少は好きだったのか、別れた理由は一体なんだったのか、振ったのはどっちからなのか。色々聞きたいところだったがここは口を噤むことにした。あまり立ち入るのは良くない、これが妹離れの一歩だと思いながら。

そしてバイトも辞めたのか家にいることが多くなった凜。どこか元気のない凜に一か八か気晴らしに、次の休みにドライブでも誘ってみると、思いがけないOKをもらってしまった。しかし凜とどこかに出かけるなんて久しぶり過ぎて、どこに行ったらいいのか分からない。16才ってどこに行きたいものなのか見当もつかず、本人へ直接聞いてみた。

「凜、ドライブどこに行きたい?」
「どこでもいい」

即答され撃沈。その16才のどこでも良いが分からないから聞いているのだ。しょうがないから以前亜弓ちゃんと行ったところを提案する。

「よし、じゃ海見に行こう」
「……遠くない?」
「遠い方が良いだろ、出かけた感じがして。で、帰りに海鮮丼でも食って帰ってこよう」
「それ亜弓ちゃんとのデートコース?」
「え?」

なんでバレたのか、びっくりして思わず顔を引きつらせてしまう。中学の頃やきもちをやいて体調を崩したのをふと思い出して、慌てて違うところを提案しようとした矢先、

「いいよ、そこに行きたい」

という返事が返って来た。思春期を終えて凜もストレートに気持ちを伝えてくるようになり大分付き合いやすくなったと思っていたのに。また凜が何を考えているのか分からなくなってきた。