そんな調子で亜弓ちゃんが二人をどうぞどうぞと家の中へ招き入れ、ソファーへ座らせるとお茶の準備をし始めた。
二人の目の前で未だに腕を組んだままの俺。彼の方をじろりと睨み付けると、にこっと返される。なんとも食えない子だ。
「ちょっと、近いんじゃないか?」
「え?」
「二人の距離。もっと離れて座りなさい」
そう指摘すると凜が口を尖らせて否定し隣の彼へ同意を求めた。
「えー、別に普通じゃない?ねぇ?」
「うん」
「近い近い」
そうやって二人の間を離そうとすると、そこへお盆にお茶を持って亜弓ちゃんがやって来た。
「ごめんね、顔を合わせただけで子どもができちゃうとでも思ってるみたい」
そう言いながら、それぞれの前へお茶を入れたコップを置いていく。するとそれを聞いた目の前の爽やか君が唐突に口を開いた。
「大丈夫ですよ、ちゃんとする時はつけますから」
任せてくださいと言わんばかりに手でグッドサインを作る彼。爽やかな顔から似つかわしくないセリフだ。その素直さが俺の苛立ちを増長させた。
「……冗談じゃない、凜に手出したらお前、○○にして、○○にするからな」
「うわー……引くわ、篤司君のそのセリフの方が聞かせらんない」
ドン引きした様子の亜弓ちゃんに、何を言われたのか分からない彼の頭の上には?マークが浮かんでいた。
「全然意味分からなかった、凜ちゃん分かる?」
「ごめんね、気にしなくていいよ」
その後も俺一人だけカリカリと苛立ち、それを亜弓ちゃんがからかうように笑って場を和ませていた。凜は俺をやれやれという目で見ながら傍観して、一番緊張感を持つべき彼はというと少し風変りな子なのか終始つかみどころなく、最後に俺へ「凜ちゃんと結ばれたら報告しに来ます」と俺の神経を逆なでるようなことを言って帰って行った。
こうやって、凜の初めての彼氏紹介は終わった。その夜、亜弓ちゃんが帰って行ったあと二人で夕ご飯を食べながら、それとなしに切り出した。


