今、ここであなたに誓わせて



そして次に低学年の子達の組体操と紅白リレー、そして一番最後に地区対抗リレーとなる。例年なら紅白リレーが終わった後は駆け足で次の地区対抗リレーの待機場所に向かうのだが、今回はその必要もなくゆっくり自分の観席へ戻った。

だけど、なぜかそこで地区対抗リレーへ出るはずの小百合ちゃんが自分の席でうずくまっているところを発見。直に先生が血相を変えて連れて行かれるだろうに、どこかに隠れもせず、だけど自分から待機場所へ向かおうともしない。気持ちは分かるけど、一体どうしたいのか。きっと本人が一番悩んでいるんだろうけど、どうしても気になって声をかけた。

「リレー、もう招集かかってるよ?」

私から声をかけられたことに驚いたのか、細い体をビクつかせた後か細い声で言った。

「……なんだか気分が悪くて」
「走れないの?」
「もうさっきの指揮だけで精一杯だよ。りんちゃんの徒競走見てたよ、私そんな足の早い人のかわりになんて走れない。りんちゃんだって、自分が走った方が良いと思ってるでしょ?皆その方が良いと思ってる。なのに私が走るのはおかしい、負けるのが分かってるのに走りたくない。皆の足引っ張りたくない」

封を切ったように愚痴を零す彼女。どうしてそこまで走りたくないと思っているのに、その正直な気持ちを母親にぶつけなかったのか。

「そう、お母さんに言えば良かったじゃん」
「言える訳ないよ」
「なんで?」

少しの沈黙の後、ちらっと見上げられる。まるで母親がいない私には分からないと言われたようでドキっとした。
だんまりを決め込んだ彼女に、私は自分の率直な意見を伝える。

「……嫌だったらちゃんと伝えた方がいいよ。こうやってここにいても何も解決しないよ?私もお兄ちゃんに上手く気持ちが伝えられなくてよく喧嘩するから、あまり人のこと言えないけど」

そうやって話している間にも、家族競技の玉入れは佳境に入っているようでアナウンスが盛り上がってる。
ここで蹲っていてもしょうがないと観念したのかやっと立ち上がった彼女。一緒について来て欲しいと頼まれ、家族席の方へと向かう彼女について行った。