今、ここであなたに誓わせて



おいなりさんを食べながら、亜弓さんのカメラチェックが入る。

「ちょっとブレブレじゃない?カメラマンしっかりしてよ」
「いやいや、応援しながら撮るの難しいんだって」
「いいの撮るのに集中して」
「えー、俺も応援したい」

ごねるお兄ちゃんの同僚は、昔から馴染みの川崎さん。一緒に来てくれたもう一人はお兄ちゃんの後輩にあたる、渡辺さん。そして今日この最新鋭のビデオカメラを貸してくれたのはお兄ちゃんの先輩だった。
両親はいないけどそこまで寂しさを感じたことはない。きっとこうやって周りに良い人達がいてくれたから。そんなお昼ご飯はどこの家族よりも賑やかだった。

「いやぁ、でも本当応援しがいがあるよな、りんちゃん早いからさ。同じグループで走ってた子達も皆早い子なんでしょ?その中で一番って凄いよ」
「ありがとうございます」

同僚の川崎さんに褒めてもらった私よりも、お兄ちゃんの方が凄く気持ち悪い顔をしながら喜んでいて顔を引きつらせながら礼を言った。
そしてお昼が終わり、お兄ちゃん達の待ちに待った家族競技。今年も玉入れ競争でお兄ちゃん達は「りんちゃんのため」と口では言いながら意気揚々にアナウンスされた集合場所の入場門へ向かっていった。

私も家族競技が終わったらすぐに鼓笛隊のパレードが始まる。待機場所で待ちながら、お兄ちゃん達の奮闘ぶりを見守った。

私は鼓笛隊ではバトンをやる。女の子の希望人数が多くてオーディションになったのだが、なんとか勝ち取ることができた。だけど一番オーディションが熾烈だったのは指揮者だった。一番衣装が凝ってるし、なんと言っても各グループの前で先導して歩くのだから一番目立つ。そんな中、例の転校生小百合ちゃんが、その頂点の総指揮をいきなり横からぶんどったのだから皆から不平不満が出てもしょうがない。

前の子もオーディションの中から一番に選び抜かれただけあって、なかなか貫禄あったけど。小百合ちゃんもいつものあの頼りなさげな印象とは裏腹になんとも凛々しかった。背中に一本筋が通っているみたいで凄く綺麗、そしてその姿勢は最後まで崩されることはなかった。手の位置だってそう、疲れで少し位ずれてくるだろうに、ずっと同じ角度。もうなんかあらかじめ設定されたロボットみたいに。

その集中力にはなんとも鬼気迫るものがあって、指揮者の先っちょに羽根がついた筒状の帽子を取るとその顔は汗だくだくになっていた。