名前を呼ばれ白線の内側に並ぶ。予行練習から分かっていたけれど例年通りのメンバーで、リレーでもこの顔ぶれが揃う。
緊張感が一気に高まったところで、「りんちゃん、頑張って」とおばさんの声が聞こえてきた。観客の中声がした方からその姿を探すと、そこにはおばさんとおじさん、亜弓さんが手を振っていた。
いつも私の運動会を見に来てくれる。こっぱずかしく思いながらも小さく手を振り返した。
よーい、の後のけたたましいピストルを合図に一斉にゴールへ向かって駆け出す。ピストルが鳴ってから、本当一瞬。コーナーを回り、抜きつ抜かされを繰り返し、最後の一直線。その先でお兄ちゃんの姿が目に入って、早く、早く、と白いゴールテープだけを目標に足を動かす。そしてなんとか一番にゴールテープを切ることができた。
一番の旗を持った先生に「入賞者はこちらへー」と体を引っ張られ、2個目のバッヂを肩に付けてもらった。紺色のバッヂが二枚、自分でも誇らしげに見る。
「りんーっ」
嬉しそうに私の名前を呼ぶお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんに照れながらピースして返すと、シャッターチャンスとばかりにその隣にいたお兄ちゃんの仕事仲間がカメラを向ける。もう一人は、その横でずっとビデオカメラを回してくれていた。
毎年休みの人で予定のない人はこうやって見に来てくれる。
「さすがなだなぁ。足の速さは兄ちゃん譲りだ」
「私お兄ちゃんから生まれてきた訳じゃないんだけど」
「血は分け合った仲だろう」
皆見に来てくれるのは嬉しいのだが、私としてはちょっと恥ずかしくて。
別に応援してくれるのは純粋に嬉しいのだが、皆、家族参加の競技に気合入りまくりなのだ。少し血の気の多い人達だから、私の運動会はおまけでこれを楽しみに来ているんじゃないかと思ってしまう位に。
去年は私は白組で、家族競技は玉入れ競争だったのだがお兄ちゃんと皆で紅組に2倍の差を付けて勝利。最終的に総合優勝も白組だったのだが、事情を知っている先生やクラスメイトなんかは私が紅白どっちに入るかで勝負が決まるなんて茶化されたこともあった。
お昼になり、おばさん達の元へ。カラフルなレジャーシートの上に2段重ねのお重箱が3セット。おばさんと亜弓さんで朝早くから準備してくれたのだろう。
「りんちゃん早かったねー、かっこよかったよー」
「皆で来てくれたから頑張りました」
「りんちゃんが好きなおいなりさんいっぱい作って来たからね。サンドイッチもあるよ」


