さっきの女の子達の言う通り。地区対抗リレーなんてその地区で一番早い子が走るのだ、観客も紅白リレーよりそっちの方を気合入れて応援してるような気がする。そこを引越ししたてで顔馴染みのない、贔屓で選ばれたような子が走るなんて。しかも周りは選りすぐりの足の速い子達、どうみたって運動が得意そうには見えないし、リレーで足を引っ張るのは目に見えてる。
しかもあんな気の弱そうな子、もしかしたら当日運動会来ないんじゃないだろうか。自分から間違ってもリレーを走りたいなんて言い出しそうにないし、母親に無理矢理走らされるんだろう。可哀想に。なんで分かんないんだろう、大人って本当に勝手だ。
そんな噂が流れ始めてすぐ、突然私のクラスへ乱入してきた男子がいた。浅黒く日に焼けたそいつ、真也とは小さい頃からよく見知った仲で、幼馴染みたいな関係だった。地区対抗リレーで私が出ないということに、やきもきしている奴がここにも一人。絶対来ると思った。で、言うことはうちのお兄ちゃんと一緒のことだろう。
「なんでお前走んねぇの?」
「なんでってしょうがないじゃん、大人の事情なんだから」
「なんだよお前の兄ちゃん泣くぞ」
「いいよ他で頑張るから。アンカー応援してるから頑張って」
5年間ずっと真也にバトンを渡してきた。今年は最高学年にして最後の運動会だというのに。さすがに会えばお互い罵り合うような中でも、一瞬寂しそうな顔をされて私もなんだか寂しくなった。地区の代表としてお互い選ばれ続けて、顔を合わせればまたお前かよなんて言っていたけど、このリレーに関しては長年の戦友のようなものだったから。
そんなこんなで運動会はやってきて、私はリレーの分例年以上に奮闘して右肩に紺色のバッヂ1枚つけていた。入賞するとバッヂをもらえるようになっており、3位が赤色、2位が緑色、そして1位が紺色のバッヂをもらえるのだ。
さっきは借り物競争で運がモノをいったけど、今度は純粋な徒競走。6年生は100m走りそこで一番を競うのだが、組み合わせは足の速い順で構成され私はもちろん一番最後の組。毎年ここが一番の正念場で、一番力が入るところ。


