キミがこの手を取ってくれるなら


「…じゅんた」

思わず口にしてしまっていたらしい。あっ、と思ったがすでに遅く、北原さんに聞こえてしまっていた。

「ん、例の幼なじみくんか?ここにいるのか?どこだよ。」

誤魔化すこともできず、私は無言で2人がいる席を指差した。
その時、ふと視線をあげたじゅんたと目が合ってしまった。その瞬間、

「行くぞ。」

「えっ?」

北原さんが席を立った。そのまま、どんどんじゅんたのいる席へと歩いて行ったので、私も慌てて後を付いていった。

「こんばんは。」北原さんが得意の営業スマイルで挨拶すると、さっきまでは後ろ姿しか見えていなかった向かい合わせに座っていた女性が私達を交互に見て「知り合い?」とじゅんたに聞いた。

ポニーテールがよく似合う、快活そうな女性だった。

「はじめまして。奥村の上司の北原です。奥村から、よく自慢の幼なじみの話を聞いていたので、今偶然同じ店に居るって聞いたからご挨拶がしたくなってしまったんですよ。」

と北原さんがじゅんたに向かって言った。
何か私がじゅんたのことばかり言ってるみたいじゃない…

「そうだったんですね。はじめまして。奈子…奥村奈緒子の幼なじみの大村純です。」とじゅんたが挨拶を返す。それから、私を見ながら「で、この人は同僚の…」

「崎山 香織(さきやま かおり)です。4月から大村くんと同じ学校に赴任したんです。」

と、なぜか香織さんも私をじっと見ながら挨拶をした。