「いいれす。よけいなことで、しんぱい、かけたくないれす。」
「出た。お前の悪いクセだよ。ひとりで考えるのは悪いことじゃない。でも溜め込むな。人に話すと案外冷静になって考えられるようになるもんだよ。」
黙りこむ私に北原さんは続けてこう言った。
「幼なじみなんだ。お前の性格なんて、十分分かってんだろ?きっと、余計なことなんて思わないよ。甘えるときにしっかり甘えとかないと、信頼が無くなっていくぞ。」
「……そうれすか……」
言われたことはなんとなく分かる。
私は人に甘えることができない。高校の時に感情をさらけだしてしまったことで、とても辛い思いをした。それから私は感情を素直に表に出したり、他の人に心から頼ることができなくなった。幼なじみのじゅんたにでさえもそうだ。
ちらり、と時計に目をやる。22時をとっくに回っていた。もう送ってもらわなくては、と思った私は店員さんを呼んで会計をお願いしようと店内を見回した。
ふと右側の奥の席のカップルに目が行く。女性は後ろ向きで顔が見えなかったが、一緒に座っている男の顔を見て、私は固まった。
そこに座っていたのは、じゅんただった。
