キミがこの手を取ってくれるなら


そう言っただけで、紫ちゃんは特に驚いた様子もなく、あっさり「いいよ」と言ってくれた。

今日は早出でもうあがるから、このままうちにおいで、と。

私の電話に驚いていたのは北原さんだった。
「で、俺はどこに向かって運転すればいいんだ?」

紫ちゃんの家は私の家の近所だ。直帰でこのまま送ってもらう予定だった私は「とりあえず私の家の方向でお願いします。」と話した。


「オッケー。…髪の毛の長さ次第で、明日の朝イチで緊急ミーティングだからな。」

いろいろと聞かせてもらうぞー、とおどけて言う北原さんに私はクスクスと笑った。


家に着くと、紫ちゃん家に行ってきます、とだけ母に言ってすぐにそのままの格好で家を出た。今日は取材だったから、動きやすい格好にしていてよかった。

少しでも早く着きたくて急いで自転車をこぐ。風になびく髪の感触とも、もうこのままお別れするのだと思うと、すっきりするような、無性に寂しいような、なんだか複雑な気持ちになった。


紫ちゃんはもう帰って来ていて、営業が終わった店のほうにまた明かりをつけて、準備を整えて待っててくれていた。

「で、どうする?」と彼女は聞いたので、
「ショートにして。」とお願いした。

「わかった。」とだけ言うとすぐに切りはじめてくれた。何も聞かないでくれることが嬉しかった。